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新サレルノ養生訓第9回3-5 1年の月 10-12月

March 30, 2015 | 0 Comment

サレルノ養生訓とは

イタリア料理が好きな方や、地中海式ダイエットに関心をもたれる方の中には、「サレルノ養生訓」という本があることをお聞きになった方もいることでしょう。サレルノは南イタリア、カンパーニャ州にある都市で、ナポリの南東50キロに位置する有名な保養地です。学問の地としての歴史は古く、八世紀にはヨーロッパ最古の医学校が創設され、広く病気療養、保養の人を集めて「ヒポクラテスの町」とも称されました。イギリスやフランスの王族も治療のためにこの地を訪れたと言われます。

そのサレルノ医学校の創設後、十一世紀末には医学校の校長を中心に小さな衛生学の読本が作られました。それは全編ラテン語の詩の形をとって書かれ、食を中心に入浴法や睡眠など、生活習慣に関する注意事項を予防医学の見地から、一般大衆にもわかりやすく解説したものでした。

これが「サレルノ養生訓」です。現代イタリアでも、ある年齢以上の世代では、幼少時より親からそのラテン語詩を聞かされて育った人がいるとのことです。サレルノ養生訓の原典は、十四世紀スペインの医師•哲学者であるビッラノーバが注解した360行のラテン語文とされ、その後増補されて最終的に3520行まで膨らみ、またサレルノ医学校の名声が上がると共に、英語、イタリア語、フランス語など各国語に翻訳されて、広くヨーロッパ中に流布しました。

地中海地方の3大農産物(麦、オリーヴ、ブドウ)とイチジク

地中海地方の3大農産物(麦、オリーヴ、ブドウ)とイチジク

新訳サレルノ養生訓について

2001年に私が訳解した日本語版サレルノ養生訓(柴田書店刊)に用いたテキストは、1607年に刊行された英語版(通称ハリントン版、エリザベス一世に仕えた思想家ハリントン卿による英訳)です。この日本語版サレルノ養生訓は幸い多くの方に親しんでいただきましたが、再版のめどが立たず今日に至りました。そして数年前のこと、イタリア食文化に造詣が深い文流会長西村暢夫氏から、自身所持されるイタリア語版養生訓にハリントン英語版(2001年の日本語版)にない記載があることをお聞きし、併せてイタリア語版からの新訳を考えてはどうかという提案をいただきました。

英語版とイタリア語版の養生訓の記述に差異が生じたのは、養生訓成立に関わる複雑な事情があります。中世以降イタリア語を含めて主要な言語に訳された養生訓は、時代とともにラテン語原典の内容が膨らむことで異本や外典が生じ、次に各国語に翻訳される過程で、その国の歴史や時代背景からも影響を受けて訳者による異訳が生じたことで、各版の間で記述に違いが認められたと考えられます。ところで、ヨーロッパ食文化の二大潮流は、ギリシア•ローマ型とケルト•ゲルマン型に大別(M.モンタナーリ)され、このたびイタリア語翻訳者の森田朋子氏の協力を得て、ギリシア•ローマの流れを引くイタリア語版からの新訳が可能となり、出版前に当サイト上で少しずつ公開する運びとなりました。ハリントンの英語版との比較も興味深いところです。

今回訳者の森田氏は、新訳養生訓のテキストに現代イタリア語訳であるシンノ版(Mursia社刊)に採用されたラテン語(デ•レンツィ校訂によるラテン語完全版、3520行からなる)を用いています。1876年サレルノに生まれたアンドレア•シンノ博士は、博物学•農学を修め、科学教師や図書館員の職に就きながら、郷土史とサレルノ医学校の研究を行い、1941年サレルノ養生訓の注釈付き翻訳書を著しました。森田氏と私の間で協議し、今回の新訳にあたりシンノ氏の注解を参照しながらあくまでラテン語原典を尊重し、さらに時代とともに膨らみ豊かになった記載を盛り込んで、現代日本の読者により興味を持てる内容とすることを取り決めました。

以上、前置きが長くなりましたが、この11月から当サイト上に、新訳サレルノ養生訓を連載いたしますので、楽しみにして下さい。

ウェルネスササキクリニック 佐々木 巌

訳者略歴

森田朋子(もりた・ともこ)

京都市出身・在住。京都光華女子大学在学中、古典ラテン語を故・松平千秋教授に学ぶ。シエナ外国人大学にて第二段階ディプロマ(イタリア語・イタリア文学専攻)取得後、イタリア語翻訳・通訳業に従事。主訳書『イタリア旅行協会公式ガイド①~⑤巻』(NTT出版・共訳)。
解説者略歴

佐々木 巌(ささき・いわお)

ウェルネスササキクリニック院長、医学博士。専攻は内科学、呼吸器病学、予防医学。長年外来診療や講演活動を通じて地中海式ダイエットの啓蒙と普及にあたる。近著に地中海式ダイエットの魅力と歴史、医学的効果をわかりやすく解説した「美味しくて健康的で太らないダイエットなら地中海式」(大学教育出版)がある。

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3-5 1年の月

  • 10 10月

10月はワイン、食べ物、それにジビエをもたらします。

雄羊や鳥の肉も、体に悪くはありません。

健康によいからといっても、暴食はいけませんが。

欲しいだけ食べて構いませんが、ただし内臓を傷めないように。

ヤギのミルク、クローブ(丁子)、ヒツジのミルクを口にしなさい。

10月には狩猟、ワイン、鳥がもたらされます。

活用し、節度を守るよう自己管理しなさい。

過剰な食物で内臓に負担をかけることのないように。

とにかく適量を守るよう心がけることです。

  • 11 11月

さて11月にわきまえておくこととしてあなたに示されるのは

何がふるいにかけられるべきで、何が害をなすかです。

賢明なダイエットがあなたの毎日となりますように。

11月が示すのは次のような規範です:ハチミツ水を飲むこと、

穀物を摂取すること、ハチミツとショウガを食べること。

この時期には誰ひとり、入浴もウェヌスも得てはなりません。

これらで男は衰弱し、女は水腫ができます。

飲酒は無益で、血管切開は体によろしい。

この時期にはシナモンなどの香辛料を利用しましょう。

11月にはハチミツ水も健康によいと考えられています。

ショウガと、それに甘くとろけるような山盛りのハチミツも。

洗滌もひんぱんではいけませんし、ウェヌスの戦に赴くのもいけません。

老齢に達する前から、老けて見られては困りますから。

  • 12 12月

12月には熱いものが体によろしい。

キャベツはご法度です。頭の血管を傷つけますから。

洗滌はごくまれに、反対に豆と飲酒は大切に。

こまめに寒さから頭を守りなさい。そうして健康で過ごしなさい。

病気になるといけませんから、保存しておいたシナモンを食べなさい。

暖炉のそばの食卓で、ワインのお湯割りを飲みなさい。

この時期に葉もの(葉野菜)を食卓に並べてはいけません。

防寒した頭の血管を切開しなさい。

そして、あなたの盃が、シナモンの芳香を放ちますように。

解説

10月はジビエの季節。狩猟による肉料理にはシカ、イノシシ、ノウサギ、キジ、ウズラ、ツグミなどがあり、とくに裕福な上流階級からは四足獣の肉(赤肉)よりも鳥類の軽い肉(白肉)が好まれました。香辛料のクローブは健胃剤として消化を助け、食中に飲むワインもまた胃酸の分泌を促します。飲酒には摂取カロリーの不足分を補うという意味もあります。食べることと飲むことが奨励されるけれども、一方で胃腸など内臓に負担をかけすぎないよう、ここでも節度を守るように念が押されます。クローブは熱帯多雨のインドネシア、モルッカ群島原産。フトモモ科の植物チョウジノキの開花前の花蕾を乾燥させた香辛料で肉料理などに用います。クローブの花蕾が釘に似た形で丁子の名があり、生薬の丁子は芳香健胃剤。

11月に穀物とハチミツを摂りなさいと勧めるのは、間近に迫る冬に備えて、カロリー源としての炭水化物を多く摂って体に脂肪を蓄えておきなさいという意味にもとれます。ここで養生訓に始めて穀物が登場します。麦(穀物)、オリーヴオイル、ワインは古の時代より地中海地方の食事を特徴付ける三大農産物です。温暖な地中海地方では秋に種を蒔いた冬小麦が翌年の初夏に収穫されますが、小麦の安定した生産供給が望めなかった時代、十分ふるいにかけられた小麦で作られる白パンは贅沢品でした。そこで一般の人々は精製度の低い小麦やライ麦でできた黒パンを、また家畜の飼料だった大麦やオーツ麦(燕麦)の粥やスープを食べていました。

今日健康志向の高まりとともにライ麦やオーツ麦(燕麦)などの穀類が人気です。乳酸菌を含むパン種を使用したライ麦パンは酸味があって持ちがよいのが特徴ですが、小麦と比べて胚芽とふすま(食物繊維)の割合が多く、固くて密度が高いためにゆっくり消化吸収されるので、食後の血糖上昇が緩やかで肥満や糖尿病予防に適しています。グルテンを含まないオーツ麦は脱穀後も穀粒からふすまと胚芽が分離しないために、タンパク質、ミネラル、食物繊維を多く含み穀類の中ではもっとも栄養価が高く、グラノーラやミューズリーなどシリアル食品の原料になりました。現在健康的な食生活の代名詞となった地中海式ダイエットが毎日の食卓にさまざまな種類の穀物を欠かさないように説く理由は、主食としての穀物が本来もつ栄養学的価値を評価すると同時に、遠い昔からこうした穀物の摂取が人々の健康に寄与してきたことが再認識されるからです。

さて、冷たく乾いた地中海性気候の秋に穀物をとる際にはスープにするなど調理にも工夫が必要ですが、体を温めるショウガなどを併せて摂ることも大事。ショウガは熱帯アジア原産ショウガ科の多年草。野菜のみならず生薬としても用いられます。その根茎部分が生姜(しょうきょう)と呼ばれる生薬で、乾燥したものが乾姜(かんきょう)。その辛味から体を温め、胃腸の冷えに対する健胃作用、寒気を伴う風邪の治療薬として用いられます。冬12月に登場するシナモンは熱帯に生育するクスノキ科ニッケイ属の常緑樹。香辛料としてのシナモンはシナモンの樹皮をはがして乾燥させたもの。今日カプチーノやアップルパイなど洋菓子の香り付けに用いられますが、生薬では桂皮と呼ばれ、温熱作用があります。

※新サレルノ養生訓の無断転載及び引用を固く禁止します。

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