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新サレルノ養生訓 第16回  9章 5.飲み物について 11-14

August 19, 2015 | 0 Comment

サレルノ養生訓とは

イタリア料理が好きな方や、地中海式ダイエットに関心をもたれる方の中には、「サレルノ養生訓」という本があることをお聞きになった方もいることでしょう。サレルノは南イタリア、カンパーニャ州にある都市で、ナポリの南東50キロに位置する有名な保養地です。学問の地としての歴史は古く、八世紀にはヨーロッパ最古の医学校が創設され、広く病気療養、保養の人を集めて「ヒポクラテスの町」とも称されました。イギリスやフランスの王族も治療のためにこの地を訪れたと言われます。

そのサレルノ医学校の創設後、十一世紀末には医学校の校長を中心に小さな衛生学の読本が作られました。それは全編ラテン語の詩の形をとって書かれ、食を中心に入浴法や睡眠など、生活習慣に関する注意事項を予防医学の見地から、一般大衆にもわかりやすく解説したものでした。

これが「サレルノ養生訓」です。現代イタリアでも、ある年齢以上の世代では、幼少時より親からそのラテン語詩を聞かされて育った人がいるとのことです。サレルノ養生訓の原典は、十四世紀スペインの医師•哲学者であるビッラノーバが注解した360行のラテン語文とされ、その後増補されて最終的に3520行まで膨らみ、またサレルノ医学校の名声が上がると共に、英語、イタリア語、フランス語など各国語に翻訳されて、広くヨーロッパ中に流布しました。

新訳サレルノ養生訓について

2001年に私が訳解した日本語版サレルノ養生訓(柴田書店刊)に用いたテキストは、1607年に刊行された英語版(通称ハリントン版、エリザベス一世に仕えた思想家ハリントン卿による英訳)です。この日本語版サレルノ養生訓は幸い多くの方に親しんでいただきましたが、再版のめどが立たず今日に至りました。そして数年前のこと、イタリア食文化に造詣が深い文流会長西村暢夫氏から、自身所持されるイタリア語版養生訓にハリントン英語版(2001年の日本語版)にない記載があることをお聞きし、併せてイタリア語版からの新訳を考えてはどうかという提案をいただきました。

英語版とイタリア語版の養生訓の記述に差異が生じたのは、養生訓成立に関わる複雑な事情があります。中世以降イタリア語を含めて主要な言語に訳された養生訓は、時代とともにラテン語原典の内容が膨らむことで異本や外典が生じ、次に各国語に翻訳される過程で、その国の歴史や時代背景からも影響を受けて訳者による異訳が生じたことで、各版の間で記述に違いが認められたと考えられます。ところで、ヨーロッパ食文化の二大潮流は、ギリシア•ローマ型とケルト•ゲルマン型に大別(M.モンタナーリ)され、このたびイタリア語翻訳者の森田朋子氏の協力を得て、ギリシア•ローマの流れを引くイタリア語版からの新訳が可能となり、出版前に当サイト上で少しずつ公開する運びとなりました。ハリントンの英語版との比較も興味深いところです。

今回訳者の森田氏は、新訳養生訓のテキストに現代イタリア語訳であるシンノ版(Mursia社刊)に採用されたラテン語(デ•レンツィ校訂によるラテン語完全版、3520行からなる)を用いています。1876年サレルノに生まれたアンドレア•シンノ博士は、博物学•農学を修め、科学教師や図書館員の職に就きながら、郷土史とサレルノ医学校の研究を行い、1941年サレルノ養生訓の注釈付き翻訳書を著しました。森田氏と私の間で協議し、今回の新訳にあたりシンノ氏の注解を参照しながらあくまでラテン語原典を尊重し、さらに時代とともに膨らみ豊かになった記載を盛り込んで、現代日本の読者により興味を持てる内容とすることを取り決めました。

以上、前置きが長くなりましたが、この11月から当サイト上に、新訳サレルノ養生訓を連載いたしますので、楽しみにして下さい。

ウェルネスササキクリニック 佐々木 巌

訳者略歴

森田朋子(もりた・ともこ)

京都市出身・在住。京都光華女子大学在学中、古典ラテン語を故・松平千秋教授に学ぶ。シエナ外国人大学にて第二段階ディプロマ(イタリア語・イタリア文学専攻)取得後、イタリア語翻訳・通訳業に従事。主訳書『イタリア旅行協会公式ガイド①~⑤巻』(NTT出版・共訳)。
解説者略歴

佐々木 巌(ささき・いわお)

ウェルネスササキクリニック院長、医学博士。専攻は内科学、呼吸器病学、予防医学。長年外来診療や講演活動を通じて地中海式ダイエットの啓蒙と普及にあたる。近著に地中海式ダイエットの魅力と歴史、医学的効果をわかりやすく解説した「美味しくて健康的で太らないダイエットなら地中海式」(大学教育出版)がある。

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  • 11 コーヒー

コーヒーは眠気を妨げ、あるいは引き起こし、また頭痛や

お腹のガスを取り除いてもくれます。

尿意を催させ、しばしば月経を誘発します。

よりぬきの、健康な、中くらいに焙煎したものを求めなさい。

  • 12 ビネガー

少量のビネガーは体を冷やしますが、多くなると水分を奪います。

そしてやつれさせ、黒胆汁を生成し、精液を減らします。

干からびた神経にさわり、太った体を絞ります。

  • 13 リンゴ酒とナシ酒

当地の野ではいま、地元の洋ナシとリンゴが鈴なりです。

それらから果汁を採り、体が温まるリキュールを造りなさい。

飲めば肉づきがよくなり、たくましい体になります。

  • 14 ハチミツ水

甘きハチミツ水よ、お前の甘美さゆえに、私はお前に身を捧げよう。

お前は胸をすっきりとさせ、腹を緩める。

ハチミツ水はかく語る「私は、飲む人を痛い目にあわせる」。

その言わんとするところは「その人が私に一気に身を捧げたならば」。

ハチミツ水は血管をひきしめ、声を快いものにします。

解説

コーヒーは熱帯高地原産の常緑低木、コーヒー樹の種子から抽出されます。coffeeの語源はアラビア語のkawhahに由来すると言われ、飲料としての起源は、現在のエチオピア地域で西暦850年ごろに発見されたとする説があります。それはイスラムの修道院での出来事でした。山羊がとある潅木の木の実を食べた後で騒ぎ出したことに気づいた山羊飼いが修道僧に報告してその木の一枝を差し出し、修道僧はその植物の種子から飲み物を調整したというのです。もともとはアラブの高官だけがこの飲み物を強壮剤として口にできたのですが、イスラム世界ではコーヒー店が次々とできて、庶民が政治談義をするたまり場となり、怒りを買った時の施政者から禁止されたこともありました。地中海交易で東洋と活発に交流していたサレルノは、この美味な飲料が伝えられた最初の土地の一つでした。

「コーヒーは眠気を妨げ、あるいは引き起こし・・」と養生訓にあるのは、コーヒーは飲む人によって強壮剤あるいは鎮静剤の作用が生じるという意味で、当時その薬効については議論が続いていたことを示します。今日コーヒー豆にはカフェイン、クロロゲン酸(ポリフェノール)、油脂、窒素化合物など100種類の異なった物質が含まれていることが知られ、利尿作用、中枢神経刺激作用、呼吸系の刺激作用、疲労軽減をもたらし、その刺激作用はカフェインによるものです。しかし最近の話題はコーヒーに含まれるポリフェノールのクロロゲン酸で、2型糖尿病や肝疾患の発症を予防する効果が認められ、一日あたり3杯のコーヒーを飲むことが健康に役立ちます。

アルコールを空気にさらしておくと自然発酵することは古くから知られ、ビネガーの製造はワインの発明にまで遡ります。ビネガーは酢酸菌というバクテリアによってアルコール液が5%ほどの酢酸を含む液に変わってできた液体調味料です。コハク酸など有機酸を含む物の0.25kcal/gと低カロリーで、肥満予防にも推奨されました。適量を用いれば食欲増進、消化促進、胃腸炎の予防など消化管に有益で、さらに有機酸の作用でエネルギー代謝を円滑にし疲労の回復にも役立ちます。そして酸性液であるビネガーは有害な細菌増殖を防ぎます。昔から食べ物の保存や腐敗防止作用が知られ、疫病の流行時にはビネガーが奨励されたのです。一方、ビネガーは粘膜への刺激性が強く、摂取しすぎると喉が渇き身体から水分を奪うと考えられ、処方には注意が必要でした。

サトウキビが栽培されるまで、またイチジクやナツメヤシといった甘味の強い果実を除けば、何千年もの間、唯一の甘味料だった蜂蜜はたいへん貴重で、宗教的儀式や医薬品として用いられました。この蜂蜜に偶然から水を加えて発酵させて出来上がったのが蜂蜜水です。古代には蜂蜜水は神々の飲み物とされ、祭儀などで人々が分かち合う神聖な飲み物だったと伝えられます。中世では蜂蜜水はワインやビールと並ぶアルコール飲料でしたが、今日この飲み物は廃れてしまいました。蜂蜜水は胸と腹を浄化してくれると養生訓では賛美され、しかし飲み過ぎは厳しく戒めています。新養生訓の編者シンノ氏によると、モンペリエ大学で医学を教えたこともある中世フランスの異端審問官として有名なベルナール•ギーは、蜂蜜水を食後酒に分類して、夏には水で、冬には湯で割るように勧めました。

※新サレルノ養生訓の無断転載及び引用を固く禁止します。

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